インドネシアとシンガポール 難しい隣人関係
とかく隣人関係は難しい。それは国同士にも当てはまる。インドネシアとシンガポールも例外ではない。インドネシアは大国だが貧しく、シンガポールは人口はインドネシアの56分の1、面積にいたっては2700分の1という小さな国。だが、経済では逆にインドネシアの1人当たりの国内総生産(GDP)が954ドル(2003年)なのに対し、シンガポールは2万1698ドル(02年)と逆転する。こうした「ねじれ」があるため、両国民の感情は複雑なものとなる。
懸案事項の1つが「逃亡犯罪人引き渡し条約」の締結で、30年以上合意できないまま両国関係の大きな障害となってきた(02年7月13日コンパス紙)。2年前、インドネシア・ユドヨノ大統領誕生により再開された交渉が、またもや暗礁に乗り上げた。インドネシアが引き渡し条約の署名を先行させることを主張したのに対し、シンガポールが並行して交渉してきた防衛協定との同時署名を求めたためだとされている(07年2月13日ジャカルタ・ポスト紙)。
交渉再開に合意した2年前、ユドヨノ大統領は「引き渡し条約は、インドネシアの汚職撲滅のために不可欠である」と理解を求めたのに対し、リー首相は「引き渡し条約ができればそれでインドネシアの汚職がなくなるというものではない」と、水を差すような反応をしたという(05年2月15日コンパス紙)。
インドネシアは「シンガポールが、インドネシアの犯罪者、特に経済犯の逃亡先となっている」と主張している。銀行救済支援融資資金を不正使用した容疑で指名手配されている元ペリタ銀行の理事や、BNI銀行の預金を持ち逃げした容疑者らが、シンガポールに潜んでいるとされている。中にはシンガポール国籍を取得した者もいるといわれている。彼らの「不正」資産はシンガポールで運用され、同国経済の成長に貢献していると考えられている。シンガポールが防衛協定との同時署名を求めているのは、引き渡し条約の締結を引き伸ばす言い訳にすぎない……少なくともインドネシア人の多くがそう考えている。
インドネシア側の不信も、あながち根拠のないことではなさそうだ。というのも、正義派の弁護士として有名なトドゥン・ムルヤ・ルビス(Todung Mulya Lubis)氏も、コンパス紙で「『世界で5番目に汚職の少ない国』であるシンガポールがこうした行為を続けるのは、自分の国さえきれいであれば、周りの国は汚れても構わないということに等しい」(06年11月2日)と批判。さらに「グッド・ガバナンス(正しい統治)や法の下の平等などの原則について説くシンガポールが、汚職撲滅のために必要な不正な実業家と不正な資金を、インドネシアに戻すことに手を貸そうとしないのは非常に残念だ」と述べ、地域全体を発展させる姿勢をシンガポールに求めている。
対抗措置としてインドネシアは今月に入り、シンガポールへの砂利輸出を禁止した。狭い国土を広げるため、シンガポールが積極的に進めている海の埋め立てのための砂利だ。この唐突に決められた措置がシンガポールにどれほどのインパクトを与えるかは分からない。しかし、両国の絡まった感情の糸が、また1つ増えたことは確かなようだ。
(高取茂)
情報リンク:JanJan


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